2019/9/21売り切れました。
我々日本の音楽好きは兎角既視感のあるものを求めがちではありますが、このサンパウロのロック・バンドは違います。60's - 70's のヴィンテージ・サウンドをマニアックに探求した音作りが為されているのですが、メロディ、ハーモニー、管弦を用いたアンサンブル、絶妙に配されたそれらがまったく新しく、本質を汲み取ろうとすれば何度も耳を傾けなければならない、そんな作品。
チン・ベルナルデス(vo,g,p)、ギリェルミ・ヂ・アルメイダ(b)、途中加入のビエル・バジリ(drs)のトリオ編成。モータウン的リズム&ブルースから派生した至福感みなぎるロックンロールを体現した「Melhor do que parece」の成功、ジョン・レノンのソロ作を彷彿とさせる高い芸術性のチン・ベルナルデスのソロ「Recomeçar」、ガル・コスタがチン・ベルナルデスの楽曲を採り上げたり、ジャルズ・マカレーと共作共演したり、実父マウリシオ・ペレイラの最新作の制作に携わったり、と話題に事欠かなかった10年目のオ・テルノ、現代のバンドらしくhtml言語のように表記された4作目「<atrás/além>」(後ろに/向こうに)では、前作やチンのソロにて突き詰めたメランコリックで叙情を醸し出すメロディーや管弦、ヴィブラフォンにグロッケンを効果的に配し、ドラマティックな展開に胸が詰まるm-1"Tudo que eu não fiz"やm-2"Pegando leve"に始まり、タイトル曲m-4や先行シングルとして発表されたm-5"Nada/Tudo"など相反する二面性を詩作で描き出しつつ、先に国内盤7インチ・アナログで発売されたm-7"volta e meia"には坂本慎太郎とデヴェンドラ・バンハートが特別ゲストで参加。ドラム・メンバーのビエルに捧げたm-8"Bielzinho / Bielzinho"では独特なサンバ・ホッキを展開、さらにトゥリッパ・ルイスやルイザ・リアン、マリア・ベラルドなどサンパウロの音楽シーンの友人たちがコーラスを務め、ロックのフォーメーションにMPBからのフィードバックを有効的に採り入れ、芸術的価値を高めています。ファルセットと肩肘張らず奏でられるピアノが際立ったm-10"Profundo/Superficial"や、ざっくばらんなeg弾き語りの間が器の大きさを感じさせるm-11"Passado/Futuro"、まさにエンディングの寂寥感に満ちたm-12"E no final"まで、ブラジルのロック・バンドが新しいフェーズに入ったことを感じさせるに十分な傑作。