サンバ、パゴーヂ、ボサ・ノヴァ、ブラジル音楽を解体してみせたエストゥダンド(学習)・シリーズなどエクスペリメントで奇抜なブラジル音楽を代表する存在のトン・ゼー。新作が届きました。世代やカテゴリーを超えて意欲的にコラボレイト、ブラジル音楽という銀河の中、自らも光を放ちながら交信し旅するという作品。ミルトンやカエターノといった大御所からクリオーロやキコ・ヂヌッチらサンパウロの若手まで豪華ゲスト多数。
トロピカリズモをテーマにした前作からすると、一聴してサンバ、ロック、トイ・ポップと多岐に渡る内容にコンセプトを計り知るのが難しいように思うのですが、トン・ゼーの右腕ともいえるマルチ奏者のダニエル・マイアのみならず、演劇的要素をもった無国籍ビッグ・バンドの
トゥルーピ・シャ・ボルドがホーン・アレンジを含むオケを構成し、トン・ゼーは吐息や口笛などと身体ひとつで応酬するm-2"A Quantas Anda Voce"や、同バンドのアフロ・ブラジル調な演奏に変わった語感・譜割の唄が載るm-8"Salva Humadade"、
パッソ・トルトやメタ・メタで活躍するキコ・ヂヌッチがサンバ楽器とegでエクスペリメントに構築したサウンドに、アフロ・ブラジルとヒップホップの融合でシーンを席巻する
クリオーロが共作・共演のm-3"Banca de Jornal"、ミルトン・ナシメントが参加したm-5"Pour Elis" はエリス・レジーナへのオマージュ、現地で人気を博すシウヴァがサウンド・メイキングを行なったバイリ・ファンキm-7"Mamon"、タタ・アエロプラーノまで参加し、
フィルアルモニカ・ヂ・パサルガーダが玩具箱の室内楽といった調子でバイアォンを奏でるm-9"Guga Nalavagem"はこのグループのマルセロ・セグレートが共作・共演、ロック界ではウ・テルノとも共作・共演を果たし、トン・ゼー自身のトリッキーな弾き語りm-13"A Boca da Cabeca"、そしてキューブリック映画がモチーフになっているという
カエターノ・ヴェローゾとの共作・共演"A Pequena Suburbana" まで詩の引用やプロパガンダを挟みながらロジカルに繰り広げられるブラジル音楽版2015年宇宙の旅。